コスタリカから、今だけの小さな物語

ダスキンあいのわ基金障害者リーダー育成海外研修派遣事業 第38期派遣生 コスタリカ留学中の全盲女子大生です!

4月を振り返る

 月に一度、私の留学を支援してくれているダスキン奨学金事務局に、研修内容報告レポートを提出する。その内容をここでもシェアしつつ、遅まきながら先月のあれこれを振り返ってみたい。

 

 先月は、インターンである国連開発計画のオフィスの人たちと、今までと比べ物にならないほどたくさん話すことができ、そのおかげでいつもと少し毛色の違う仕事をもらえた。いちばん大きかったのは、「オフィスの中だけじゃなく実際に街中に出て働いてみたい」というかねてからの希望が叶い、週末行われたゴミ拾いキャンペーンに参加したことだ。現場はサンホセ中心街の大きな道路の脇で、朝8時半に行くと、すでに30人ほどが集まって、軍手や巨大ゴミ袋、飲み物などを用意していた。外国人で白杖を持っていた私はかなり異色だ?ったらしく、キャンペーンに参加すると思われなくて、近づいて行くと皆「どこ行くの?」と聴いてきた。ちなみにゴミ拾いの最中には主催者からインタビューを受け、「私はコスタリカの環境事情にすごく興味があって、こうして実際の活動に関われてとてもうれしい」というようなことを話したところ、数日後にそれが公共のニュースになって国中に流れてしまった。映像を撮られていたことすら気づいていなかったので、ものすごくびっくりした。

 

 道路脇には、ペットボトルやガラス瓶、ボール紙、本来使い捨てではないはずの食べ物を入れるタッパーなど、ありとあらゆるゴミが散乱していて、観光地の美しさを知っているだけにそのギャップが強烈に迫ってきた。誰かがこのキャンペーンのために、予めどこかから拾い集めておいたんじゃないかと、勘ぐりたくなるほどだった。車の窓からポイ捨てしていく人が多いらしい。前にUverの運転手さんが、「コスタリカでは、政府がいろんな先進的な政策をやっているけれど、普通の人の意識はそこまで高くない」と言っていたのは、こういうことだったのだろうか。ツーリズムは国の大事な産業だから、政府が力を入れて環境を整備しているけれど、街の人たち一人一人はそこまで日々の生活の中で環境を意識することはない。ここには分別のシステムもあまりなくて、皆一緒くたに捨てている。環境先進国とは言われつつも、ごみ問題は都市には付き物なのだと思う。等身大のコスタリカを知れてよかった。

 

 その他オフィスワークとしては、国連開発計画コスタリカオフィスのホームページを音声の出るパソコンで読む際、どこをどんな風に変えたらもっと読みやすくなるかを、私なりにまとめたレポートを作った。たとえば、写真にタイトルを付けるときには本文の一部だと勘違いしないように先に写真であることを明記する、レイアウトを変える、スペイン語と英語が1つのページの中でなるべく混ざらないようにする、など。私自身パソコンが苦手だから、もしかしたら私が知らないだけでもっと上手に読む方法があるのかも・・・とも思うけれど、とにかくまた一つ形になるものを残せてほっとした。

 

   仕事以外だと、インターン先の先輩とその旦那さんと一緒に、サンホセ中心街にある国立博物館に行ったのが良い思い出だ。コスタリカで発掘された古生物や人類の化石から、コロンブス到達以前の先住民の暮らし、スペイン人による征服と、その後に発展したコーヒーやサトウキビ産業、1948年の内戦と軍隊の廃止、医療の発達など、コスタリカの歴史を一望できる有名な観光スポット。先輩は、私が触れる物があるかを心配してくれていたけれど、私にとってうれしいことは彼女たちと一緒に出かけられることだ。実際に行ってみると、係のおじさんがほとんど私たちにつきっきりになって、本来は触ってはいけない物を触らせてくれたり、もうしまっているエリアをわざわざ私たちのために開けてくれたり。まさに至れり尽くせりの応対をしてくれた。『博物館のアクセシビリティに関して、コスタリカはまだまだ遅れてるんだよ」と先輩は言っていたけれど、たとえ視覚障害者が来館したときの対応マニュアルがなくたって、ここにはそのおじさんから直接私へ向けられた、‘Bienvenida(ようこそ)’の笑顔がある。

 

   印象に残ったのは、ジャガーの剥製と、先住民の石のアート。前者はとにかく、その爪と牙の鋭さに驚いた。ネコ科の動物だからなんとなく形のイメージはあったけれど、初めてサイズ感を掴むこともできた。背中から覆いかぶさったら、首に腕を回してちょうどよくハグできそうだ。いつか本物に会いたい。後者は3本足のテーブルのようなもので、それぞれの足が天界、地上、地下の世界を表すらしい。テーブルの表面は上向きに沿っていて、縁には猿やワニ、オオハシなどの立体的な彫刻がいくつも施されている。1つの岩から切り出したとは到底信じられない精巧さだった。

 

   4月は、「何かが動き出した」と感じた月で、この振り返りをしている最中にも新たなことがいろいろと起こっている。続く記事でまた少しずつご紹介していきたい。