コスタリカから、今だけの小さな物語

ダスキンあいのわ基金障害者リーダー育成海外研修派遣事業 第38期派遣生 コスタリカ留学中の全盲女子大生です!

Roberとの出会い

 こちらに来て、たくさんの心に残る出会いをしてきたけれど、ここまでインパクトの強い出会いは初めてだったかもしれない。世の中、いろんな人がいるものだ、本当に。

 

 彼、Roberを私に紹介してくれたのは、以前ここにも書いた、バスの中で私を手伝ってくれた夫婦だった。いや、こちらに来てすぐの頃に彼の話をモルフォの人たちから聞いていて、いつか紹介してもらおうと思いながらなんとなくタイミングをつかめずにいたのだ。「視覚障害者でジャガーの研究をしているブラジル人がいる」こんな話、気にならないわけがない!

 

 バスで助けてくれた夫婦に連絡先を教えてもらい、早速サンホセから車で30分ほどのところにある彼らのオフィスを訪ねた。オフィスと言っても、小さな農場の中の家を借りているだけ。敷地内には、コスタリカの国の木であるグアナカステを始めたくさんの木々が生い茂り、門を入ると羊が挨拶しによってくる。オフィスに入っていくと、Roberとその仕事仲間、仕事仲間の介助犬ルークが迎えてくれた。昼ごはんとコーヒー、デザートまで出してもらいながら、いろんな話を聴いた。

 

 ジャガーの研究をしている、と聞いていたけれど、現在の彼はそこから派生したいくつかのプロジェクトに関わり、自然と人をつなげる活動をしている。舞台はコスタリカの南西、パナマとの国境に近いオサ半島のジャングルと、そのそばに広がる天然のプールのように穏やかな湾、Golfo Dulce.ここは彼のジャガー研究のフィールドでもあって、今から15ねんほど前にジャガーの尿から病気に感染して、ほとんど目を使わない生活になってからは、五感を使って自然を感じることを目的としたトレイルをジャングルの中に作ったり、いろいろな難しさをかかえた子供達が野生のイルカと触れ合う機会を作ったりしている。

 

 Roberは私に、「私の」感じる森や海を表現したらいいと言った。それは、私が兼ねてからやってみたいなとぼんやり思っていたことと重なった。1つは、自然公園のレンジャーになること。鳥の声や、花の匂いや、木の感触に、みんなの心を向けられる人になれたらいいなと思っていた。もう1つは、こうして文章を書くときのために、自分だけの表現を生み出すこと。自然の描写にしても、人の描写にしても、すでによく使われている表現ではなくて、もっと自分の感じ方を適切に表す言葉を見つけられたらいいな・・・という気持ちがあった。だから、彼のプログラムにぐっと惹きつけられた。

 

 もう1つ、彼のプログラムに、自然を使ったセラピーの要素があることにも心惹かれた。いい加減なことをいうようだけれど、現代人はみんな何かしらのセラピーが必要なんじゃないかと思っていたし、自然から元気をもらえることは感覚としてわかったから。森林セラピーやアニマルセラピーに興味を持って、本をたくさん読むようになった。

 

 Rober自身の生き方も、私には面白くてしかたない。コスタリカだけでなく、中南米のあちこちを旅していて、一度も定職に就いたことはないらしい。お金がなくなると、研究者としてのキャリアを武器にあちこちの町や村で講演をして、そのお金でまた次の旅へと繰り出していくのだ。ウミガメの卵を食べたり、エクアドルの山岳地帯の先住民の村に泊まったり、とにかく経験豊富。ちなみにチャンスさえあれば日本にも来たいと。西表島の山猫に会うのが夢だそうだ。

 

 たまたまこの日彼に会えたおかげで、その週の週末にはオサ半島へのフィールドトリップに一緒に連れて行ってもらえて、私がプログラムの話を聴いて抱いた印象は間違っていなかったことがわかった。いや、それ以上だった。コスタリカ大学の音の研究者や、アニマルセラピーの専門家、もちろん地元オサ半島の人たちなど、たくさんの人が関わって、今まさに成長している最中のプログラムであり、自分がそこに関われていることがただただうれしい。